眼内レンズの種類
白内障の手術で使われる眼内レンズには、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。白内障手術の目的は患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ 生活の質)の向上です。それぞれのレンズのメリット・デメリットについて患者様に詳細にお伝えし、患者様の生活スタイルに沿ったご提案をいたします。
単焦点眼内レンズ
大きなメリットは、健康保険適用レンズであることです。患者様の費用負担が軽減されます。乱視に対応したレンズもあります。デメリットは、レンズの焦点距離が1つということです。近くに焦点が合うレンズの場合、遠方は見えにくくなります。遠方に焦点があるレンズでは、手元が見えづらくなります。どちらにしても、日常生活では眼鏡・コンタクトレンズの使用が必要となります。
【イメージ参照:遠くと近くそれぞれに焦点を合わせた場合のイメージ】
多焦点眼内レンズ(選定療養対応)
メリットは、遠近両方に焦点を合わせられることです。遠近両用眼鏡のイメージです。術後に眼鏡の使用頻度が下がります。機能面で様々な改良が加えられていて、患者様の実生活に即したレンズを選んでいただけるようになってきました。乱視がひどい方にも対応するレンズがあります。デメリットはレンズ自体が高価なことですが,選定療養適応の場合,大幅に負担は軽減されます。
※乱視が過度な方は適用できない場合があります。
テクニスシナジ-・シンフォニー:エイエムオー・ジャパン(株)・パンオプティクス:日本アルコン(株)【選定療養対象】
多焦点眼内レンズは、遠方-近方の両方に焦点が合わせられるだけでなく、近年では、患者様の日常生活に合わせて、近方の焦点を50cm、42cm、33cm付近に微調整できるようになってきており、白内障の手術後、できるだけ眼鏡を装用する機会が少なくなるように進化してきています。
例えば、
●ゴルフが好きな方、買い物が好きな方:50cm付近に焦点が合うレンズをご提案致します。
●料理が好きな方、読書が好きな方:42cm付近に焦点が合うレンズをご提案致します。
●写真撮影(カメラ)が好きな方、裁縫が好きな方:33cm付近に焦点が合うレンズをご提案致します。
選定療養について
当クリニックは厚生労働省から選定療養の認定を受けています。認定医療機関で選定療養適用の多焦点眼内レンズ手術を受けた場合、検査・診察・手術・薬代は健康保険適応となります。ただ,選択したレンズにより差額をご負担頂く必要があります。
費 用 | 選定療養認定医療機関 | 一般医療機関 |
---|---|---|
検査・診察・手術 | 健康保険適用 (1~3割負担) |
全額自己負担 |
眼内レンズ費用 | 差額代のみ自己負担※ | 全額自己負担 |
薬 代 | 健康保険適用 (1~3割負担) |
全額自己負担 |
※選択する眼内レンズにより,費用は異なります。
ファインビジョン(3焦点眼内レンズ)※選定療養対象外
遠-中-近の3焦点
通常の遠-近2焦点の多焦点眼内レンズの場合、遠方と手元の2点に焦点が合いますが、パソコンのディスプレイ、デスクの上の写真など、だいたい60cm程度の中間距離が見えにくくなります。この中間距離にもう一つ焦点が合うように設計され、2焦点眼内レンズの欠点をカバーしたのがファインビジョンです。術後の眼鏡・コンタクトレンズの使用頻度がかなり減り、患者様のQOLの大幅な向上に期待が持てます。
【イメージ参照:遠くに焦点を合わせた単焦点眼内レンズとファインビジョンの比較イメージです】
眼内レンズの弱点をカバー
2011年にベルギーの会社から発売された新しいタイプの多焦点眼内レンズです。焦点距離が増えたほか、レンズを非球面にデザインすることで光の拡散を抑え、まぶしく感じたり輪がかかって見えたりするグレア、ハローなどの現象が軽減するなど、これまでのレンズの欠点をカバーしています。また、目への悪影響が懸念されているブルーライトや紫外線をレンズがカットする効果も持っています。
国内未承認レンズのため全額自己負担
ファインビジョンは、他の多焦点眼内レンズと同様に健康保険適用外です。片眼52万円/両眼97万円(両眼割引適応)(消費税別)かかります。先進医療の対象にもなりません。全額自己負担となります。
※費用には、診察、術前後検査、手術費用など治療にかかる費用が含まれております。
レンティス(フルオーダーメイドの眼内レンズ)※選定療養対象外
フルオーダーメイドで最適な眼内レンズを患者様の目の状態に合わせて、フルオーダーメイドでつくられる眼内レンズです。あらかじめ用意されたレンズの中からもっとも効果が高いものを選ぶのではなく、一人一人に最適を目指してつくられます。海外で作成されるため、発注から完成までに6週間前後かかります。強度近視、強度乱視にも対応でき、様々な患者様の状態に応じて、必要な機能を細かく盛り込めます。遠視や近視、老視の矯正のみならず、矯正が難しかった強度近視や強度乱視の矯正にも対応しています。グレア・ハローを抑え、コントラストも良好光がまぶしく見える、輪がかかって見えるというグレア・ハロー現象が他の眼内レンズよりも少ないとされ、コントラスト感度も高いため、比較的くっきり明瞭に見えるといわれています。レンティスユーザーの90%以上の方が眼鏡要らずに遠近両用の多焦点眼内レンズでコントラストも良好なため、日常生活では支障なく生活できるといわれています。他の多焦点眼内レンズと同様に健康保険適用外です。また、選定療養の適用外となります。片眼47万円/両眼87万円(両眼割引適応)(消費税別)
※費用には、診察、術前後検査、手術費用など治療にかかる費用が含まれております。
多焦点眼内レンズの見え方
正常な見え方、白内障の見え方、単焦点眼内レンズの見え方、多焦点眼内レンズの見え方を比較できます。見比べてみてください。
単焦点眼内レンズ
単焦点レンズは焦点ポイントが1点です。患者様の生活スタイルに合わせて焦点距離を選択します。「遠」に合わせた場合、遠くはよく見えるようになりますが、手元のリモコン、読書や書き物、スマホの使用などを見る時は眼鏡・コンタクトが必要となります。「近」に合わせた場合、近くはよく見えるようになりますが、テレビや窓の外、壁にかかった時計などを見る時は眼鏡・コンタクトが必要となります。
多焦点眼内レンズ(2焦点眼内レンズ)
遠-近の多焦点眼内レンズの場合、手元も遠方も良好な視力が得られます。日常生活での眼鏡などの使用頻度は少ないと考えていいでしょう。ただ、中間距離(パソコンのディスプレイや商品の値札など)が見えにくいケースもあり、現在ではレンズの選択である程度可能になってきています。
3焦点眼内レンズ・レンティス
2焦点眼内レンズの欠点であった中間距離にも焦点が合うようにつくられています。手元も、中間距離も、遠方も良好な視力が得られるため、手術後に眼鏡・コンタクトをかける必要性はほとんどないと報告されてります。
また、レンティスも患者様の日常生活に合わせてオーダーメイドでレンズを作成するので、手術後の眼鏡やコンタクトの使用の必要性はほとんどありません。
眼内レンズの比較表
単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ | |||
---|---|---|---|---|
焦点を近くに | 焦点を遠くに | 2焦点レンズ | 3焦点レンズ | |
近距離の見え方 | ○ | ×(眼鏡必要) | ○ | ○ |
中間距離の見え方 | ×(眼鏡必要) | ×(眼鏡必要) | △ | ○ |
遠距離の見え方 | ×(眼鏡必要) | ○ | ○ | ○ |
費用(片眼) | 1割負担:約18,000円 |
選定療養加算費用 |
選定療養加算費用 |
|
2割負担:約36,000円 | ||||
3割負担:約54,000円 |
※選択する眼内レンズにより,費用は異なります。
グレア・ハローについて
白内障の手術後は、光がまぶしく伸びて見える(グレア),光っ